【カイトボーディングに使うカイトについて】



【トラクションカイトの特徴】

 カイトボーディングは80%程度をカイト操作に依存していると言われています。
このスポーツをより安全に楽しむ為には、カイト自体の実地での練習はもちろんですが、ある程度はカイトの構造的知識が必須と言えます。
 特に、海上に出た後には、その時の環境状態に即応していかなければなりません。
 (訳が分からずに、もたつく時間が長いと流されたりする事もままあります。)
又、常識的にも、漫然と試行錯誤を繰り返すのと、知識やイメージを備えておいたうえでの試行錯誤では、その上達加減に自ずと差がつくのも自然な事だからです。
通常の凧(カイト)の多くは空に浮かぶ(飛ぶ)様子そのものを楽しむ物がほとんどです。
一方、カイトボーディングに使う凧は、操作する人間を引っ張る「ドラッグパワー(牽く力)の獲得」を目的としています。

 このようなパワー獲得を目的としたカイトの事を、特に「トラクションカイト」と呼んでいます。
トラクションカイトの一番の特徴として、翼としても機能するようにバランス取りされた凧と言う事ができるでしょう。

 凧は従来からある和凧のように、ただ単に空中に浮かべるだけならば、必ずしも翼の形状をしている必要はありません。
 しかし、パワーのon、offや旋回の任意性を含む操作性や、最低限ライダーを滑走させるだけの力を必要とするトラクションカイトにとって、空気の力を効率的に取り出すしくみである翼の性能が付加されているのには大きな意味があると言えます。

(トラクションカイトは、パワーの発生が目的ですが、実際にデザインもいろいろでカラフルですし、サイズも大きく従来の凧以上に優雅な風格が備わっているので、飛んでいる様子そのものも楽しめるかと思います。)



凧(カイト)は只、空中に揚げるだけなら割とどんな形でも揚がるが・・・。
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※(青矢印は風向)
 (凧の大体の可動域を薄緑で表示)
翼形状と、その形状をゆがめるしくみを持たせる事で、空間的に大きな操作の任意性、自由度などを獲得。


※(参考)和凧にかかる代表的な力の成分 ※(参考)トラクションカイトにかかる力の成分
別に翼形状をしてなくても凧は揚がる。
この凧の場合、上がり具合(静止位置は)風力によってのみ決まる。
●凧は常に「全ての力が釣り合った位置まで行こうとする。」
こういう凧の場合、空中に浮かべ止めておく事が目的で、必要な力は、糸を含む部材重量を支えるだけの力のみ。
カイト自体の風に対する角度や、動くスピードなどによって、その成分の強さ、向きは様々に変わる(変えられる)。
●こういうカイトの場合でも「全ての力が釣り合った状態まで行こうとする」事に変わりはない。
流体が持つ、「翼(物体)を流れ去る際にエネルギ−ロスが最小となるように循環を生じせしめる」性質はカイトを風をまともに受けない位置まで運ぶ。)

※カイトボーディングのカイトが翼形状であることから、ずばり「ウイング」と呼んだりします。
当サイトでは、バーやラインを含んだ全般を指すときカイト風を孕む部分を特にウイングと表そうと思います。


凧、カイトに作用する力については、飛行機の翼でよく説明に使われる「ベルヌーイの定理」だけでは、
説明として十分ではないようで(
)、それだけで高度な学問が成立する程に、様々な力が働いていると
言われています。

ただ、カイトボーディングの為のカイトは、
「あらかじめ必要な性能が備わった物」を購入して使用する事がほとんどだと思われますので、
その辺りの「ガクジュツテキな」小難しい事は、特に詳しく知らなくても、あまり問題は無いと思われます。

実際のカイトボーディングに直接関係して、大事だと思われる要素を書き出してみると

@ 
カイトが空間(空気中)を速度を持って移動する時に生みだされる揚力を、
       「牽くパワー」「飛ぶパワー」として利用しているという事。
A その発生するパワー(揚力)の強さは 
翼の面積と対気速度の二乗に比例するという事。・・位でしょう。

これを更に実践に即した表現をすると
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「パワーが欲しい場合」⇒
カイトを揚げる前に出来る事・・・ウイングのサイズをアップさせる。
カイトを揚げた後に出来る事・・・ウイングが速く進むように操作する。

「パワーを減らしたい場合」⇒
カイトを揚げる前・・・ウイングのサイズを落とす。
カイトを揚げた後・・・ウイングが急激に進まないように操作する。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
と言えるでしょう。
単純ですが、この程度の理解で構わないハズです。

※ベルヌーイの定理
「空気は流速が上がると、気圧が下がる。」

これは、翼の揚力発生の説明によく使われますが、実際は、これだけでは説明は難しいようです。(これがカイトになると特に!?)
他にも「空気の持つ粘性とそれが生み出す循環」への理解や、「境界層(物体表面の粘性が働く層)」に関する理解などが必要だと言います。この定理を正しく理解しないままの説明も少なくないそうで。
よくある勘違いの例として・・
●翼断面形状の必要性
(揚力の発生には上面が膨らみ下面が平面である必要があるわけではない)
●空気の翼後縁部での同着性
(風洞実験などで実際には翼上面の流体は下面より速く流れる。)

この辺の説明の詳しくはここ。分かりやすく、参考になります(興味のある方)。



【ウイングサイズについて】

カイトボーディングを楽しむには、「最低限これだけの」といった風力はどうしても必要になってきます。
乗る人間の体重にもよりますが楽しいライディングには、平均風速にして5m/s以上は欲しいところです。

上の項での単純な(手を抜いた)説明からすると
風が弱いならば、それだけウイングの面積を広げれば、よりパワーは得られるハズですが、
あまりに風が弱すぎる場合には、いくら面積を広げても人を滑走させられるようなパワーは生み出せなくなります。
物理的な限界として、ウイングも大サイズになると強度の問題をカバーする都合などから、
その構成部材も同様に増えるので、ウイングその物の重量もかさんで行きます。
そして、大きくなる程にその動きは遅くなるので、「空間を速度を持って移動する時に発生する揚力」も、
大して望めなくなるという現象が出てきます。
(実際にカイトを扱えば分かりますが、大サイズの物ほど動きはゆっくりで、小サイズの物は速く動く傾向にあります。)

あるレベル以下の風の場合においては、
風が弱いからといって、どんどんウイングサイズを大きくすればいいと言う単純な話では無いのが現実です。


さて、風が弱い(無い)場合では物理的にカイトが揚がらないので、特に危険な目に遭う事はありません。
一方、風が強すぎる場合では、風が強くなるに従ってそれだけ事故の確率も増えると考えて間違いないので、
当然の事ながら、カイトを揚げる前に「できるかできないか、自分がやるかやらないか」の判断が重要です。

 カイトの有る無し以前に、人がその場で留まっていられない程の風が吹くような状態では無理なのは明らかですが、
それほどでもない場合には、一番の判断基準はその時感じる 「恐怖心」 次第だと思います。
その感覚を第一に、必ず風速計などで数値として、その判断の裏付けを取るようにすれば完璧でしょう。

強い風の場合、ウイングサイズをひたすら小さくすれば対処出来る場合もありますが、
小さいウイングサイズのカイトほど、軽くて速く動き、パワーのピークとボトムの差が強烈で、
滑走に必要とされる位にパワーを安定させようとすると、頻繁なカイト操作を要求されるようになります。

更に、風はその強さに応じた乱流を伴うのが普通なので、パワーのコントロールという観点からすれば、
滑走そのものをカイトボーディングとして成立させるより先に、操作者を翻弄しコントロールどころでは
無くなってくる場合がほとんどです。取り返しのつかない事になる前に撤収しましょう。


さて、以上の様な極端な場合を除いた、一定のレベルの範囲内での「風がある状態」においては、
カイトを揚げる前のウイングサイズの選択は、パワーコントロールの最も基本的な要素です。

まず、サイズの選択の大前提としてですが、「サイズの異なったウイングをそれぞれ別に揃える事」が必要です。
そして、カイトというのはレンタルには向かない物なので、“買わなきゃ揃わない”場合がほとんどです。

一般に、カイトボーディングやウインドサーフィンのようなウインドスポーツでは、
サイズを変えた道具を何点か持つ事によって、気まぐれとも言える風の様々なコンディションに対応しています。
カイトボーディングの場合、本格的にやるようになると、最低でも2枚から4枚以上の異なったサイズのカイト
を購入して持って行く事が多いです。

 上達の早さは、どれだけカイトボーディングに時間を割いたかというのが一番の要因と言われる程ですので、
技術習得と上達度合いで人に負けたくない方は、それに負けない位に「投資する」事も必要なのかも知れません。
多くの人の場合、カイトボーディングのような遊びに使える休日時間は限られた物のハズです。
せっかく海まで来て風があるにもかかわらず、ウイングのサイズに泣くというのはあまり良いものではありませんね。


さて、その時の風を感じ取り、測り、自分の体重を考慮して、自分の所持している中から
ウイングサイズを選択する訳ですが、その時の風が自分の持っているサイズに合わない場合もあります。

その場合の基本の考え方としては、その時の風域に一番近い、小さいサイズの方のウイングを選択するようにします。
その際、所持するなかで大きめのボードに乗るようにすると、帳尻が合う事が多いです。
カイトパワーの足りない部分をボードの浮力で補うようにする訳です。

カイトサイズだけでなく、ボードも2〜3枚サイズの違う物を持っていれば、組み合わせのパターンが増えるので
乗れるチャンス、練習時間は格段に増えます。

どの程度揃えるかは結局のところ、このスポーツに割ける時間、やる気、懐具合との兼ね合いです。



【まとめ〜トラクションカイト取り扱い〜】

●その時の環境、体調などを考えてやるかやらないかを判断する事
●ウイング(ボード)サイズのラインナップの充実はほぼ不可欠。
●日頃の道具のチェックとメンテナンス。
●その時の風の状態にあわせたカイトサイズのチョイス。
●パワーが必要なときには、ウイング(カイトそのもの)の対気速度を上げてやる方法。
●パワーがいらないときには、ウイングの対気速度を殺してやる方法。

を頭と体で理解する事だと言えると思います。




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