カイトボーダーは具体的に何をやっているの?】

〜カイトサーフィン(ボーディング)とは何を楽しむスポーツか〜


繰り返しになりますが、カイトボーディングが、

「カイトで受けた風にひっぱられながら、ボードに乗って水上を滑走する」

 というのはなんとなくでもご想像いただけるとは思いますが、もっと具体的に、

乗り手(カイトボーダー)がどんな状態でボーディングをしているかというと、
 ただ単に凧に風を受け、風下方向にひっぱられて“流されながら”滑走していると言うワケではありません。

 やり始めの初心者の頃や、風の弱い時、風が瞬間的に吹き上がった時などには
仕方なくそうなってしまう事があるのですが、あるレベルまで達しているほとんどのカイトボーダーは、
だいたい風向きに対して直角方向に滑走しています。

 ヨットやウインドサーフィンの推進するしくみをご存じの方は、そう現実とはなれた不思議な話でもないと思います。
しかし、そうでない方にとっては、凧(カイト)が持つ従来のイメージもあるので、

 「凧は普通、風下にしか流れないから、その方向に向けて引っ張られるのは分かるけど、
風向きに対して直角方向??それってどういう事なのヨ?」・・・

というのが率直な所だと言えるのかもしれません。

 なぜライダーが風向き直角方向に滑走し続けられるのかと言えば、
カイトボーディングにはカイトボーディング専用の
−−−「とある構造」−−−
をした凧(カイト)を使っているからだといえます。

 言い換えれば、
「和凧」や昔ブームであった「ゲイラカイト」などに代表されるような、「とある構造」を必ずしも必要としない、
“大空に揚げる事そのものを楽しむような凧”を使ってのボーディングは不可能に近いのです。

例えできる場合が考えられるにしろ、
いかな凄腕のカイトボーダーといえど、風任せに風下にしか進めないのが実際のところでしょう。

●風向きとライディングの方向(透明半球はカイトの可動範囲)※これらの用語は主にヨットで使用されるものをそのまま使っている。

●デッドゾーン
どんなに頑張っても進めない角度。
●クローズリーチ(ポインティングゾーン)
速度を一定以上のレベルで保ちながら、この角度でライディングを刻む事で風上にどんどん上れる。よく使うのが
「アップウインド」
●ビームリーチ(アビーム)
風向きに対して直角方向。スピードが出る。アップウインドの前に加速をつけたい時など、この角度を意識してやるのもいい。
●ブロードリーチ
この風下方向へのクルーズの際、ヨットの帆を船体の中心線から広げる形になるためこの名がついたと思われる。用語としてはカイトではあまり使われないかも。
●ランニング
カイトの場合ラインテンションの関係で割にスピードが出ない。なによりもプレーニングでこの方向へ行くよりは、エアーをキメてランニング方向へ降りた方が100倍気持ちいい。


 ※
ブロードリーチランニングまとめてダウンウインドと言う事が多い。

 さて、その専用の「とある構造」はというと、特に目新しい特異な構造と言うわけではなく、
グライダーなどの航空機や、ヨット、ウインドサーフィンなど空気の性質をうまく利用した乗り物が
普通に持つ 「翼形状」 の事です。

カイトボ−ダーは「翼形状」をしたカイトを使っている、
 もっといえば翼そのものを凧として揚(あ)げて使っていると言えます。

翼形状をした物体は、風を適切な方向と強さで受けるように仕向けてやる事で
 さらに風上の空気に切れ込んで、パワー方向(ベクトル)を単に風を受けただけのそれよりも
効率的に働くように変換する事ができます。

 この構造(形状)のカイトを使い、乗り手は常に風下方向に引っ張られながらも、
これを風向きに対して直角方向に切れ込んでいくようにコントロールします。
そしてそれと同時に
足には「ボード」を履き水面に当て、身体全体を使って踏み込む事によって、
  @風下に牽かれる力に対しては、水の持つ抵抗をいかして踏みとどまりつつ、
  A風向き直角方向に対しては、水の抵抗を逃がしながら、      
ボードの接水面にスピードをつける事でプレーニングの状態を作り出して、滑走、推進する事ができているのです。

●参考(ライン長は省略)



●乗り手がその場で踏みとどまっていると・・・
風をまともに孕んでいるカイトは乗り手を中心に風向きに正対するように逃げる。

やがて風を極力孕まない状態で安定してしまうが、この状態ではパワーは弱くライディングには使い物にならない。
          ↓
          ↓
●乗り手がボードを履き、 カイトが逃げる方向の抵抗だけを
  踏みとどまらずに無く(少なく)してやると・・・
  カイトは上下方向に向きを変えない限りは、
 風をまともに孕んだ状態から逃げられないままに
  その状態を継続してゆく。

安定しながらも強いパワーを生み続け、乗り手は滑走を続ける事ができる。



●カイトボーディングのゲレンデでの軌道
【アニメーション画面を開く】[310kb]
 あえて“概ね(おおむね)”直角方向と表現しているのは、
直角方向より「風下に進むこと」は当然として、
直角方向より「風上よりに進むこと」も思いどおりにアレンジができるからです。

 もちろん風向きに真っ向からあらがうような急角度で進むのは不可能ですが、直角方向より15°程度、風上寄り(場合によってはそれ以上)の方向へ切れ上がる程度のことは、それほど苦労なくできるのです。

そして特に、この技術や現象を『アップウインド(をとる)』と言っています。

 これにはある程度の「風の条件」と乗り手自身の「慣れ」と「コツを掴むまでの努力」が必要とされ、カイトパワーを使ってなんとかボードに乗れるようになった後の、最初の技術的な壁となる事柄です。

 この壁を越える前と後では、ライディングの世界が更に違って、ボードに乗っている時間も長くなり、沖へもより遠くまで余裕を持って進んで行く事が出来ますし、広いとはいえある程度限られている海上などの水域(フィールド、ゲレンデ)をそれまでとは比べものにならない位に効率的に活用できるようになります。

※実際(に近い)のカイト(ウイング)と乗り手との対比。画像の小ささもあり、そのまま一つの画面に収めると人が小さいので細かい所が分かりにくい。
 画としてぱっと見に進行方向が手前に向かっているのか、奥へ進んでいる図であるのがお分かり頂けるでしょうか?・・・。
→実際は風を受けるウイング部分はその時の風によって変えます(見た目にも大きく変わります)が、ライン(ヒモ)の長さはほとんど変えない事が多いです。
 このサイトでは、こういった画などをまじえた説明の際には特にライン(ヒモ)の長さを省略してウイング部とライダーを近づけるデフォルメを多用していきます。
 場合によってはウイングそのものも縮小しています。

※写真のような静止画、VTRなどの動画はもとより、現場を遠くから眺めている程度では経験の無い方にとってはぱっと見に、迫力のようなものは伝わるかも知れませんが、カイトボーダーがどんな意図をもって水面のゲレンデ上を使って、具体的にどんな操作や動きをしているかはかなり把握しづらいと思います。

 その原因として、カイトは最長で30メートルに及ぶヒモ(ライン)を持ち、風を受ける部分であるウイングは大きい物で20uを越える物もあり、ライダーを含めた全体像を一つの視界に収めると、ライダー自身の細かい操作や動きが見えない程に小さく感じる事と思います。

 そのスケール感覚は、カイトボーディングのダイナミックさを表す一つの大きな特徴でもあり魅力でもあるのですが、特にこれまでカイトボーディングの存在すら知らなかったような人にまで、感覚的にも分かり安いように紹介するといった事については少なからず困難を伴うと言えます。

 そんな事情もあるので、これからこのサイトでは、実際の画像は、他のカッコイイ海外のサイトなどをご覧頂くか、こちらでも少しずつ撮り貯めつつおいおい用意するとして、基本は3DCGを援用(に依存)し、画力と文章力の無さをごまか・・もとい、適度に各部のスケールをデフォルメする事によって感覚的に捉えやすくしてみようと思っています。例えば・・・。


※ カイトボーディングの楽しさについて

●車やバイク、ボートなどようにアクセルを踏めば走り、ハンドルを切れば曲がる
  といった単純な類のものとは一線を画し、
  それまでの経験とその時の感覚や身体機能をフル活用して,、臨機応変に自然の力に対応する事で
   スピードとコントロールを得られる事そのもの。
●上達に至るまでに同じ事をする仲間同士、言葉で表しにくい体験を感覚として共有する事
●うまく自分の思い通りに乗れた瞬間の大自然との一体感

    などといった、技術的、感情的な奥深さこそが、その「キモ」だと言えるのだと思います。




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