【4ライン−インフレータブルカイト】

カイトボーディングで最も見られるのがインフレータブルの4ラインカイトです。

◎カイト(ウイング部分)

インフレータブルは名前の通り、カイトの形(シェイプ)を風船に空気を入れたストラット(骨格)で保たせる物を言います。

 特に、カイトの進行方向の空気へ切り込ませるのに強度が必要な骨格部分を「メインストラット」。
それに枝分かれする形で、風をはらませる布面を翼として形づくるための骨格部分を「サブストラット」。
と言います。

 多くのインフレータブルのカイトでは、そのストラットが筒状の袋の構造をしていて、実際に風をはらむパネルに縫い付けられており、内部に「ブラダー」と呼ばれるゴム風船が入れてあります。
これらを適度に膨らませ張りつめさせる事で、軽量を保ちながらも型崩れしにくく、水に落としても沈まないでふたたびあげられるような性能を実現しています。

言葉としては、メインストラットは使わずに、リーディングエッジと表す事が多く、サブストラットも特にエアーバテンと言い表す事が多いです。

 サブストラット(エアーバテン)は、だいたい5本以上で構成されるのが一般的です。(アスペクトが高いと7本以上にもなります)


※ストラットの位置と内部「ブラダー」
 ↑黒い表示のライン  「バックライン」
↑白い表示のライン  「フライイングライン」
◎カイト(ライダー周辺部分)

※ライダー周りの装備
(1)フライイングライン、フロントライン
カイトのリーディングエッジ(リッジ)のエンドからリーダーラインを結ぶヒモ。
カイトパワーはこのラインが伝える。
左右ヒモの長さが最も同じでなければならない。
使うに従って長さに差が出る事がある。定期点検必須。(長さ:20〜30m)
(2)バックライン
カイトの
トレーリングエッジのエンドからコントロールバーの両端を結ぶヒモ。
左右のヒモの長さが同じであるように定期的に要チェック。(長さ:20〜30m)
(3)リーダーライン (3’)シーティングライン
カイトパワーをライダーに伝える部位。太めの頑丈なヒモ。
末端片方にフライイングラインともう片方にチキンループが接続される。
デパワーストラップ※を備えているのも一般的。
更にリーダーラインには、安全機構であるクイックリリースはもちろん、カイトリーシュまで、周辺に集約される傾向にある。(長さ:0.5〜1.5m)
リーダーライン上、コントロールバーがスライドする範囲をシーティングラインと呼ぶ。

※→カイトを揚げてテンションが掛かっている状態でも、任意にライン長が調節、固定できる構造。バーのスライド範囲(シーティングライン)の更に先にある事が多い。メーカー、制作者による。
(4)コントロールバー
この棒の左右の押し引きでカイトを操作する。
ウイングの方向に対して、右を引き(左を押す)とカイトは右に旋回。
左を引き(右を押す)とカイトは左に旋回。
押し引きの度合いを強くするとよりクイックに回る。
4ラインでは、リーダーライン上でバー自体をスライドさせバックラインを押し引きする事で、風に対するウイングの迎え角を調節できる。(長さ:0.5〜0.8m)
(5)チケン(チキン)ループ
リーダーラインのエンドに付いた輪っかでハーネスフックに掛ける為の物。この部位にも輪っかを解放する為の構造(クイックリリース)が付く物もある。とても丈夫。これを掛けていないときには、カイトパワーはコントロールバーにのみ掛かる。緊急時には、まずこれを外す事。いざというとき、咄嗟に外せるように訓練しておこう!バーごと引いて外すには、パワーアップしてしまう事が多くうまくいかない。めくらでチキンループを握ってフックから外せるような練習も必要だろう。
(6)ハーネスラインループ
カイトの迎え角を高い状態に保持したまま、バー左右の押し引きにメリハリを付けたい時などにハーネスフックに掛けて使う。
エアーを伴うトリック中にフックイン、滞空時間を伸ばしたりといった使い方があるが、補助的な装備なので、無くても問題はない。(かえって邪魔な事もある)
(7)ハーネス
装着した時、体前面に来るスプレッダーバー(※)にフックが固定されている。
カイトボーディングを長時間楽しむ為には必須のギア。
ライダーがカイト(パワー)に体を預ける部位。腹巻き型が一般的だが、パンツタイプやライフジャケット一体型など形は様々。
(8)(ハーネス)フック
チキンループやハーネスラインループを掛けるフック。
掛けておくことで、腕の力だけでは対応出来ないパワーを体重で抑え込み、扱いやすくする。
(※)スプレッダーバー
フックの基礎部分。フックにはカイトが生み出す負荷が集まるが、それをハーネス全体に分散させる。
最近までフックとスプレッダーバーとは溶接による固定式ばかりだったが、近年様々な工夫が見られる様になってきた。
身体とカイトのポジションに応じてフレキシブルに動くヒンジがついたり、回転系の技を連発してもカイトリーシュがからまない為の軸受けがついたり。今後の進化が楽しみ。


◎4ラインカイト〜操作と形状〜

※コントロールバーの操作とカイトの形状(4ライン)
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バーの操作によってカイトがどう変形するかを表しています。

バーの左右の押し引きがカイトのシェイプを歪め、カイトは引いた方向に旋回を始めます。引きしろが多いほどカイトは歪みが大きくなり、クイックに旋回します。
ほとんどの種類のトラクションカイトは、これに類する単純な仕組みによってほとんどのコントロールを行っていると言えます。

加えて、4ラインカイトでは、コントロールバー全体を押し引きする事ができる様になっています。このスライドによる押し引きは、トレーリングエッジを解放したり、引き込んだりしてウイングの「迎え角」を状況に応じて変えてやる事ができます。



ウイング部分が翼としての性能を発揮できる状態の時に、
●バーを押しやった場合はトレーリングエッジを解放し風を逃がす“デパワー”に、
●バーを引きつける場合は、トレーリングエッジを引き込むので“パワーアップ”に働くと言えます。
(※実際には、普段のセッティングやその時受けている風の強さ角度にかなり左右されますので、常にそうだということはできません)

この中で特に「引き込む場合のパワーアップ」については但し書きを必要とします。
カイトパワーのコントロールについては、あくまで「ウイングの対気速度」の上げたり下げたりによってウイングの特に「揚力」をコントロールしてやる事です。
パワーアップについてはウイングの対気速度を上げる事が第一です。
バーの引き込みによるパワーアップについては、あくまで補助的な要素です。

ライディング中の現象を例にあげてみます。
アップウインド中などのクルージングの際、バーを引いた瞬間にはそれまでのウイングそのものが持つ惰力によってウイングのスピードが突然落ちる事は少ないので、それまでウイングに備わっていた揚力に、プラスαのパワーを加える事ができます。
この瞬間にはパワーアップと言えるのですが、あまり引き込み続けるとウイングは抗力の増加によって減速を始めてしまい、メインのパワーとも言える「対気速度が生んでいた揚力」そのものを殺す方に働く場合があります。
パワーはあるがスピードが出ない状態になり、時にはアップウインドが困難になったり、小さいボードに乗っている場合、ライディングをうまく維持できなくなったりするので注意が必要です。バーのノーマル位置をしっかり意識して、ある程度のところで戻すなり、留めておくなりの経験に基づく“さじ加減”が必要です。

バーの「押しやり」「引きつけ」については、あくまで 「もう一越え」 のパワーやコントロールが必要な時に使う事が多いと思います。

参考:
細いカイト(ハイアスペクトカイト)などは、スライドによる引きしろに限って言えば、その影響は顕著です。
引きすぎはウイングの前縁と後縁のバランスが均されたり逆転したりといった現象が起こる事があります。

(陸上においての静止状態(※特にランチング時のエッジオブウインド)からのバーの引き込みすぎの現象として、トレ-リングエッジ(後縁)方向にカイトがユラ〜リとパワーゾーンへ動いていきます。こういうときは、慌てずバーをスライド押し戻し(チキンループを引く)てやりましょう。それでも足りなければ、バーの向こう(上)側(デパワーストラップあたり)のリ−ダーラインを手繰り寄せる操作が必要になる事があります。) 

         →〜実践編〜【ランチング】の捕捉 を参照



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